身体のこと
筋膜とは?身体の一部分ではなく全身のつながりから考える
堀江卓嗣
「筋膜」という言葉を聞く機会が増えました。
筋膜リリース、筋膜はがしなど、身体を整える方法として使われることも多い言葉です。
では、そもそも筋膜とは何なのでしょうか。
僕自身、筋膜について学んできたことで変わったのは、施術の方法以上に「身体の見方」でした。
肩が硬いから肩を見る。
腰が痛いから腰を見る。
それだけではなく、身体全体では何が起きているのかを考える。
筋膜を知ることは、そんな身体の見方につながっています。
筋膜とは?
筋膜(fascia)というと、筋肉を包んでいる薄い膜をイメージするかもしれません。
実際には、fasciaという言葉が示す範囲はもっと広く、身体の中に広がる結合組織のネットワークとして捉えられています。
筋肉や骨、神経、血管、臓器など、身体の中にはさまざまな組織があります。
それらは一つひとつが完全に独立して存在しているわけではありません。
身体の中で連続性を持ちながら存在し、私たちはその身体全体を使って、立ったり、歩いたり、呼吸したりしています。
だから僕は、筋膜を「ここを緩めれば身体が整う」というものとしてではなく、身体がつながっていることを考えるための一つの視点として捉えています。
肩が気になるからといって、肩だけを見るとは限らない
例えば、肩が動かしにくい人がいたとします。
もちろん、肩そのものを確認することは必要です。
でも実際に身体を見てみると、肩以外にもいろいろなことが起きています。
呼吸をしたときに胸郭は動いているのか。
背骨はどのように動くのか。
腕を上げたとき、どこに力が入るのか。
立っているとき、身体全体ではどのようにバランスを取っているのか。
こうしたことを一つずつ見ていくと、「肩」という一部分だけを見ていたときとは、身体の見え方が変わってきます。
これは「肩の原因は別の場所にある」という意味ではありません。
身体は一部分だけで動いているわけではないからこそ、症状のある場所だけに答えを求めないということです。
筋膜を学んで変わった、身体の見方
僕自身、筋膜について学び始めた頃は、筋膜そのものをどう触るのか、どう変えるのかという「方法」に意識が向いていました。
でも、学び続ける中で、それ以上に大きかったのは身体を見る視点が変わったことでした。
「ここが硬いから、ここを緩めよう」
だけではなく、
「なぜここに力が入っているんだろう」
「この人はどんなふうに身体を使っているんだろう」
と考えるようになりました。
身体には、骨や筋肉だけでなく、神経や血管、内臓などさまざまな組織があります。
そして、呼吸や姿勢、動きも関係しています。
一つの理論ですべてを説明するのではなく、いろいろな方向から目の前の身体を見る。
筋膜について学んだことは、そんな今の僕の身体の見方につながっています。
ボディワークでは「変える」より「観察する」
STUDIO sumicaの施術では、強く押したり、揉んだり、無理に身体を動かしたりすることを基本としていません。
まず行うのは、身体を見ることです。
呼吸はどうなっているのか。
どんな姿勢を取っているのか。
動いたとき、どこに力が入っているのか。
どこは動きやすく、どこは動きにくいのか。
その状態を確認したうえで、必要な場所に触れていきます。
触れることで身体の反応が変わることもあれば、呼吸が変わることもあります。
その変化をまた観察する。
僕が身体を一方的に「正しい状態」にするのではなく、身体に起きていることを一緒に見ながら、その人にとって必要な変化を探していきます。
施術のあとに、ピラティスをする理由
そしてSTUDIO sumicaでは、施術だけで終わらず、その後にピラティスを行うことがあります。
施術を受けたあとに立ってみる。
呼吸をしてみる。
自分で身体を動かしてみる。
すると、
「さっきより呼吸が入りやすい」
「肩に力を入れなくても腕が動く」
「立ったときの感じが違う」
など、自分自身で身体の変化に気づくことがあります。
ここが僕はとても大切だと思っています。
施術者が「変わりましたよ」と伝えるだけではなく、自分自身で感じること。
そして、その感覚のまま自分で動いてみること。
それによって、身体について新しく知ることができます。
筋膜を知ることは、身体のつながりを知ること
筋膜を学べば、身体のすべてが分かるわけではありません。
肩こりも腰痛も、筋膜だけで説明できるものではありません。
それでも僕が筋膜について学び続けてきたのは、身体を一部分だけで考えないという大切な視点を与えてくれたからです。
肩だけではなく、身体全体を見る。
姿勢だけではなく、呼吸も見る。
硬さだけではなく、実際にどう動いているのかを見る。
そして、施術する側だけが身体を理解するのではなく、その人自身にも自分の身体を感じてもらう。
身体は、自分が思っている以上にいろいろなところが関わりながら動いています。
そのつながりを一つずつ知っていくこと。
僕は、そこに身体を見る面白さがあると思っています。